「好き」に性別は関係ない:絵本で育む子どもの無限の可能性と対話のヒント
はじめに:孫の「好き」に寄り添い、ジェンダーの多様性を考える
お子さんやお孫さんの「好き」なものや得意なことについて話す際、「男の子だから」「女の子だから」といった言葉が頭をよぎることはないでしょうか。多様な価値観が尊重される現代において、過去の性別役割の考え方が、もしかしたらお子さんやお孫さんの可能性を狭めてしまうのではないかと、ご心配される方もいらっしゃるかもしれません。
この「おやこジェンダー読書室」では、絵本を通じて、お子さんやお孫さんが性別にとらわれずに、自分の「好き」を大切にし、自分らしく輝くためのヒントを提案します。絵本の豊かな物語は、世代を超えて多様な考え方を共有し、穏やかな対話の機会を生み出す力を持っています。
「好き」に性別は関係ない:ジェンダー多様性の視点
子どもたちが「好き」なものを見つけることは、自己肯定感を育み、将来の夢を形作る大切な過程です。しかし、「これは男の子がするもの」「それは女の子らしい」といった社会的な見方は、時に子どもの興味や才能に制限をかけてしまうことがあります。
私たちは、生まれながらの身体的な性別を「セックス」と呼びます。これに対し、社会や文化によって形成される性別の認識や役割、期待を「ジェンダー」と呼びます。そして、「男の子は理系で力強い」「女の子は文系でおしとやか」といった、ジェンダーに基づく固定的な考え方を「ジェンダーバイアス」と表現します。
ジェンダーバイアスは、子どもたちが多様な「好き」を探求し、自分らしい選択をする機会を無意識のうちに奪う可能性があります。本来、個人の興味や才能、得意なことは、性別とは無関係に多様であるべきです。絵本は、このジェンダーバイアスにとらわれず、子どもたちの無限の可能性を肯定するメッセージを優しく伝えることができる媒体となります。
絵本で広げる「好き」の世界:読み聞かせのヒント
性別にとらわれずに多様な「好き」を肯定する絵本は、数多く出版されています。例えば、以下のようなメッセージを持つ絵本が挙げられます。
- 男の子が繊細な手仕事や料理に夢中になる物語。
- 女の子が力強い乗り物や宇宙に憧れ、探究する物語。
- 性別に関わらず、動物の世話や芸術活動に情熱を傾ける子どもの姿を描いた物語。
読み聞かせの際は、物語の登場人物が「どんなことに興味を持っているのか」「どんな気持ちでその活動に取り組んでいるのか」に注目し、性別に関わらず「すごいね」「素敵だね」と肯定的な言葉をかけてみましょう。大切なのは、絵本のメッセージを押し付けるのではなく、お子さんやお孫さんの感じたこと、考えたことを引き出す姿勢です。
孫との対話を深める問いかけの例
絵本の読み聞かせは、孫との対話を深める貴重な時間です。読み終わった後に、ぜひ次のような問いかけを試してみてください。
- 「もし絵に出てきた〇〇ちゃん(男の子の登場人物)が、女の子だったら、同じように〇〇(好きなこと)をしていたと思うかな」
- 「この絵本の〇〇ちゃん(女の子の登場人物)は、〇〇(好きなこと)がとっても得意だね。〇〇ちゃん(孫)は、どんなことが得意かな」
- 「〇〇ちゃん(孫)が将来、大きくなったら何になりたい?それって男の子(女の子)だからとか、関係ないよね」
- 「もし、自分の『好き』なことを周りの人に反対されたら、〇〇ちゃん(孫)はどうするかな」
これらの問いかけを通じて、孫自身が「自分らしさ」とは何か、性別にとらわれずに「好き」を追求することの大切さについて、優しく考えるきっかけを提供することができます。お子さんやお孫さんの答えに耳を傾け、どのような考えも尊重する姿勢を示すことが大切です。
日常生活で「好き」を応援する視点
絵本から得た学びは、日常生活にも活かせます。お子さんやお孫さんの「好き」を性別にとらわれずに応援することは、自己肯定感を育み、多様な世界を体験する機会を広げます。
- おもちゃ選びや習い事: 「男の子だからブロック、女の子だからお人形」といった固定観念にとらわれず、お子さんやお孫さんが本当に興味を持つものを選べるよう、選択肢を広げてください。
- 服装や髪型: お子さんやお孫さん自身の好みを尊重し、「似合うね」「素敵だね」と肯定的な言葉をかけましょう。性別によって着る服や髪型を限定しない自由さを伝えましょう。
- 言葉遣い: 「男の子なんだから泣かない」「女の子なんだからおしとやかに」といった言葉ではなく、「どんな気持ちなの?」「どうしたの?」と、感情や行動の背景に目を向けてください。お子さんやお孫さんの感情を性別で判断せず、一人の人間として受け止める姿勢が重要です。
おわりに:孫の可能性を信じて、共に成長する喜び
絵本を通じて、性別にとらわれずに「好き」を追求することの大切さを孫に伝えることは、孫が自分らしく、そして社会の中で多様な人々と共に生きていくための豊かな土台となります。
このプロセスは、私たち自身が古い価値観を見つめ直し、新しい視点を取り入れる機会でもあります。絵本は、孫との世代を超えた対話のきっかけとなり、お互いの理解を深める貴重な時間をもたらします。お子さんやお孫さんの無限の可能性を信じ、共に成長する喜びを感じていただければ幸いです。